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著作権の読み物

2026/02/09同人作家が気をつけるべき著作権のポイント~「二次創作」は著作権侵害になるのか【弁護士執筆】

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「同人誌を作ってみたいけど著作権がよくわからない」「すでに同人誌を出しているけれど何か言われないか怖い」。同人活動に関わる方の多くは、こういったお悩みをお持ちではないでしょうか。
著作権の世界は複雑かつ難解で、わからないことが多いのも当然です。この記事では、同人作家が同人誌を制作・出版するにあたり、知っておくべき著作権のポイントについて、詳しく解説します。

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同人誌と著作権の基本理解

同人誌の話に入る前に、まずは著作権の基本をおさらいしましょう。

著作権の基本的な仕組み

・著作物とは
原則として「著作物」を作った人が著作者となり、著作権を有することになります。
この「著作物」とは、法律上「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)とされています。

引用:総務省e-Gov「著作権法


このうち「思想又は感情を創作的に表現したもの」というのが大事なポイントです。「人の考えや気持ちが内心にとどまらず外部にまで表れていて、そこに個性があるもの」であれば、およそ著作物にあたると考えられています。

・(財産権としての)著作権とは
「著作物」を生み出した著作権者には、財産権としての著作権と、著作者人格権があるとされています。
財産権としての著作権とは、簡単にいえば著作物を独占的に使用するための権利です。
著作権法上、複製権(著作権法21条)、上演権・演奏権(22条)、公衆送信権・公衆伝達権(23条)、翻訳権・翻案権(27条)などが定められています。
また、財産権としての著作権は、制作された瞬間に自然に発生し、原則として著作者が亡くなってから70年で消滅することも理解しておきましょう(著作権法51条2項)。この保護期間内に、第三者が勝手に複製や公衆送信等をすると、著作権を侵害することになるため注意が必要です。

出典:総務省e-Gov「著作権法


・著作者人格権とは
著作物は人と結びつきやすい権利です。なぜなら、著作物は「その人でしか生み出せなかった物」だからです。著作者の自身を保護する権利、人格的利益を保護する権利も認められており、これを著作者人格権といいます(著作権法18条以下)。著作権法では、公表権、氏名表示権、同一性保持権が定められています。

出典:総務省e-Gov「著作権法

二次創作同人誌の制作過程での著作権の発生と侵害

二次創作同人誌に当てはめると、元のマンガやアニメは、まさに原作者のアイデアが形になったものですから、「著作物」にあたります。
なお、「キャラクター」は著作物にあたらないといわれることがあります。確かに、設定としてのキャラクターは、アイデアにとどまり抽象的な概念ですから、著作物にはあたりません(ポパイネクタイ事件、最判平成9年7月17日民集51巻6月2714頁)。ただ、それがイラスト化されれば、形になっていますので「著作物」にあたります。

たとえば「ほうれん草を食べると強くなるセーラー服を着たポパイ」という設定は著作物ではありませんが、「〇〇という雑誌の〇〇ページに描かれたポパイ」は著作物にあたるということです。このように、元のマンガやアニメを作った原作者は、著作権を有することを理解しておきましょう。
また、同人誌は、原作(のイラストなど)を複製し、時にはインターネット上にアップロードもされます。これらの行為は、原作者の複製権や公衆送信権などを侵害することになるため注意が必要です。

皆さんは、「二次創作同人誌も原作を参考にした自分なりのアイデアが形になったものだから、著作物なのではないか?」と疑問を持たれるかもしれません。確かに、同人誌それ自体も著作物になり得ますし、著作権を有することもあります(BL同人誌事件、知財高判令和2年10月6日裁判所 WEBサイト掲載)。

ただ、著作権の発生と侵害は別物です。二次創作の作者は自身の作品に関する著作権を有しつつ、同時に原作者に対する著作権侵害の危険もあるのです。同人作家の権利は主に「二次創作」という概念によって説明できます。次の項では「二次創作」について、詳しく確認しましょう。



著作権が関わる二次創作とは

同人誌には、大きく分けて「原作があるもの」と「原作がないもの」があります。まず、原作を持たない完全オリジナルのものは、当然ながら原作者に対する著作権侵害などは発生しません。
一方、原作があるものはどうでしょうか。原作があるものは、一般に「二次創作」と呼ばれ、厳密には2つの種類に分けられます。

1つ目は、(あまり多くありませんが)イラスト集の中で、原作の模写のみで構成されているようなもの(独自のポーズ等もないもの)です。こちらは、創作性が加えられていないので、それ自体著作物性が認められません。したがって、原作者に対する著作権侵害のみが問題になります。

2つ目は、原作を基にキャラクターの服装等に独自性をもたせたものや、独自のストーリーを創作するようなものです。一般に同人誌といったとき、これをイメージされることが多いのではないでしょうか。数も多いですし、その分トラブルも多いようです。

原作を翻訳し、脚色するなどして新しく創作されたものを、法律上「二次的著作物」と呼んでいます(著作権法2条1項11号)。「二次的著作物」も著作物ですから、同人作家も独自の著作権を有することになります。他方で、原作を翻訳や脚色をしているので、原作者に対する著作権侵害のおそれもあるということを知っておきましょう。

出典:総務省e-Gov「著作権法

二次創作はどんなとき著作権法上違反になるの?

それでは、二次創作が具体的にどのようなときに著作権を侵害していると評価されるか、見ていきましょう。

「二次創作はグレー(判断できない微妙な状態)である」といわれることもありますが、実際には、グレーではなく「アウト(違反)」になります。オマージュやパロディと呼べば許されそうな気がするかもしれませんが、呼び方を変えても原作者の著作権を侵害していることには変わりがありません。
著作権法上、基本的には著作権者の許可か、適法な引用をしていない限り、著作権法上違法となります。以下で、場合分けをして見ていきましょう。

模写やトレースをする

単に模写やトレースをする行為は、それ自体著作権法の保護の対象ではなく、原作者に対する複製権(著作権法21条)侵害になると考えられます。
複製は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」(著作権法30条1項)使用される場合であれば、例外的に許されます。

ただし、SNSでのアップは、まず「アウト」です。世界中から閲覧可能になりますので、「限られた範囲内」での使用にあたりません。「弱小アカウントだから大丈夫」「練習で書いてみただけだから」といった理由は通用しないと捉えておきましょう。

出典:総務省e-Gov「著作権法

原作を改変する

原作の改変が二次創作の典型例ですが、基本的に翻訳権や同一性保持権の侵害となるため、気をつけなければなりません。
「翻訳権」とは、著作者が著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案などする権利(著作権法27条)で、わかりやすくいえば、二次的著作物を独占的に作る権利なのですが、この権利を真正面から侵害していることになります。
「同一性保持権」とは、著作者人格権の一つで、著作者が自分の著作物およびその題号の同一性を保持し、意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利(著作権法20条1項)です。
原作の改変は、こうした権利を侵害する行為ですので、原作者の許可なく行うと違法になります。なお、複製と異なり、私的使用の例外もありません。

出典:総務省e-Gov「著作権法

著者の名前を表示していない

上記のいずれの場合でも、原作者の名前を書かなければ、氏名表示権の侵害になります。
「氏名表示権」とは、著作者人格権の一つで、著作権者が自分の氏名を表示するかしないかを決めたり、表示をする場合にどのような名前を使うか決めたりできる権利(著作権法19条1項)です。漫画やアニメで著作者名の表示がないことはほぼないでしょうから、原作者の名前のとおりに表示しなければ氏名表示権の侵害となります。

出典:総務省e-Gov「著作権法

著作権侵害をした場合のペナルティー

著作権侵害をした場合、民事上または刑事上重いペナルティーを負うことになります。

重い責任

民事上の責任としては、主に損害賠償義務を負うことになります。請求額が数億円を超える場合もあり、そのほか、差止請求、名誉回復措置の請求を受けることも考えられます。
刑事上の責任も負う場合があるため注意が必要です。著作権侵害は10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、または両方を科される可能性があります(著作権法119条1項)。漫画海賊サイトの運営者のように、執行猶予が付かない場合もあることを知っておきましょう。

出典:総務省e-Gov「著作権法

親告罪

この刑事責任は、著作権法上ほとんどが「親告罪」とされています(著作権法123条1項)。
親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起できない、つまり、原作者が処罰を望まなければ刑を科されない犯罪のことです。

二次創作の場合は、原作者が処罰を望まないことも多かったので、侵害件数の割には刑事訴訟になる機会が少なかったといえるでしょう。ただ、同人誌の盛り上がりとともに、悪目立ちする二次創作物も増え、同人作家同士の争いに発展する場合も考えられます。このような場合に、原作者などの著作権者は、今までどおり見逃してくれるとは限りません。

また、他の知的財産権が非親告罪(告訴がなくても刑罰を科すことができる犯罪)化していることや、TPP等の海外からの圧力もあり、いずれは親告罪でなくなるかもしれません。
このように、「周りの同人作家は告訴されていないから大丈夫」などと安易に考え行動するのは非常に危険であるといえます。

出典:総務省e-Gov「著作権法

二次創作に関する実際の事件例

二次創作に関して、いくつかの著名な事件があります。いずれも、逮捕や高額の賠償など、厳しい法的対応を迫られた事件です。

ポケモン同人誌事件

ポケモンのキャラクターに似せた同人誌を販売したとして、同人作家が逮捕されたという1999年の事件です。さまざまな報道がなされ、経緯等の詳細には諸説あるのが現状のようですが、大きく注目を集めた事件でした。

ドラえもん最終話同人誌事件

ドラえもんの最終話として、装丁も似せるなどして作成された同人誌がかなりの発行部数となり、小学館などから著作権侵害を通告されたという事件です。最終的には謝罪をするなどの事態に発展しました。

ときめきメモリアル著作権侵害差止等請求事件

恋愛ゲームのキャラクターを使ったアニメを販売したとして、原作者から差止等を求められた事件です。200万円を超える損害賠償と差止等を認めました(東京地判平成11年8月30日判例時報1696号145頁)。

同人誌を制作する際の著作権上の注意点とは

以上のように、同人誌を制作するのは基本的に著作権法上違法なのですが、唯一考慮すべきは、「公式(原作側)ではどのようにいっているか」になります。

近年特に話題になったのが、「ウマ娘(ウマ娘プリティーダービー)」に関する二次創作ガイドラインの公表です。暴力的なものや性描写を含むものなどは止めるよう、定められています。
このガイドラインで禁止されているもの以外の二次創作は許容されていると読むかどうかは別として、公式が一定の条件下で二次創作を認めているものがあります。
それは、二次創作が原作の人気を盛り上げるような場合があったり、二次創作出身の漫画家がオリジナル作品で商業デビューをするケースが増加していたりと、創作の裾野を広げている側面があるためと考えられます。とはいえ、著作権侵害にあたる行為であり、さまざまなリスクをはらんでいることは念頭に置く必要があるでしょう。

著作権に対する理解度を確かめよう

同人誌制作や同人活動を行うにあたり著作権を侵害するリスクがないか、ビジネス著作権検定の試験問題にチャレンジして確かめてみましょう。

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Q
次のうち、二次的著作物にあたらないものはどれか。
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(先ほどのクイズは「ア」が正解です)

執筆者プロフィール
神尾尊礼
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。現在、東京スタートアップ法律事務所所属。一般民事事件、刑事事件から家事事件、企業法務まで幅広く担当。企業法務は特に医療分野と教育分野に力を入れている。
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