MENU
著作権の読み物

2026/01/21陥りやすい著作権侵害とは?トラブルの身近な例と対策を紹介【弁護士執筆】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
近年、SNSやブログなどの普及により、個人や会社が情報を発信する側になる機会が増えています。さまざまなツールを使った情報発信は、個人的なものだけではなく、企業の広報活動としても欠かせないものになっているといえるでしょう。
しかし、誰もが簡単に発信できるということは、正しい知識がないと、気づかないうちに他人の著作権を侵害してしまうおそれがあることも意味します。
この記事では、思い込みや知識のなさから、陥りやすい著作権侵害について、身近な例を挙げながら弁護士が詳しく解説します。

当サイトを運営するサーティファイでは、ビジネス著作権検定を開催しています。
ビジネス著作権検定は、企業の経営者、法務・総務のご担当者様、フリーランスの方々が、意図しない著作権侵害を起こさないリテラシーを身につけるためにご利用いただいています。
著作権を勉強している皆様が、知識レベルを確かめる際に活用できるビジネス著作権検定の無料サンプル問題も公開しているので、ぜひチェックしてみてください。
サンプル問題を請求する

著作権侵害とは

そもそも、著作権侵害とはどのようなものなのでしょうか。「著作権という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的な中身は知らない」という方にも、わかりやすく解説します。

著作権の基本的な仕組み

「著作権」とは「著作者の権利」であり、「著作者」とは「著作物」を創作した人のことです。
●著作権=著作者の権利
●著作者=著作物を創作した人
したがって、著作権を理解するためには、著作物とは何かを知る必要があります。

著作物とは何か
著作物とは、法律上「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定められています。

引用:総務省e-Gov「著作権法」


著作物の定義である「思想又は感情を創作的に表現」というところは大事なポイントで、「人の考えや気持ちが内心にとどまらず、外部にまで表れていて、そこに個性があるもの」であれば、およそ著作物に当たると考えられています。つまり、アイデアなどが形になったものは、おおむね著作物であるといえるでしょう。

たとえば、芥川賞を取るような小説も、小学生の作文も、ピカソの絵画も、幼稚園生の落書きも、等しく著作物となります。

(財産権としての)著作権とは何か
こうした著作物を生み出した著作権者は、財産権としての著作権と、著作者人格権を有しているとされています。
財産権としての著作権とは、わかりやすくいえば、著作物を独占的に使用するための権利です。
著作権法上、複製権(著作権法21条)、上演権・演奏権(22条)、公衆送信権・公衆伝達権(23条)、翻訳権・翻案権(27条)などが定められています。

出典:総務省e-Gov「著作権法」


著作者人格権とは何か
著作物は、その人でしか生み出せなかった物として、人と結びつきやすい権利です。そこで、著作者自身を保護する権利、人格的利益を保護する権利も認められ、これを著作者人格権といいます(著作権法18条以下)。
著作権法では、著作者人格権として、公表権、氏名表示権、同一性保持権が定められています。

出典:総務省e-Gov「著作権法」

著作権を「侵害する」というのはどういう状況か
(財産権としての)著作権や、著作者人格権を侵害する行為が、著作権の侵害ということになります。(財産権としての)著作権とは「著作物を独占的に使用するための権利」です。つまり、これを侵害するというのは、「著作権者しかできなかった独占を破る=著作権者に無断で使ってしまう」ということになります。

また著作者人格権は、著作者自身を保護する権利であり、これを侵害する行為は「作者の表示を消してしまう」「自分の名前にしてしまう」などです。著作者の名誉を害するようなことが、著作者人格権を害する行為になると理解しておきましょう。

身近な例として、インターネット上でよくある侵害行為には、以下が挙げられます。

・他人が撮影した写真を「無断で」自身のホームページにアップする
・他人が書いた文章をちょっとだけ変えて「無断で」ブログにアップする
・他人が描いたイラストを「無断で」SNSにアップする、またはアイコンにする

これらは、一歩間違えれば誰もがやってしまいかねない行為だといえます。アップロード・投稿ボタン1つで、著作権を侵害できてしまうのです。

企業広報が他人の撮影した写真を使ってしまい、謝罪するというのを目にした方も多いのではないでしょうか。
企業が著作権を侵害してしまうと、社会的信用を失うおそれがあるため、広報担当者など著作物を扱う社員や法務担当者は、どのような行為が著作権侵害に当たるのかを把握するとともに、社内に啓発する必要があります。

著作権侵害の具体的な要件

著作権侵害というのは境目が微妙で「どこからが違法なのか、厳密に知りたい」という声も多いようです。ここからは、著作権侵害の理解に役立つ、具体的な要件を説明します。

著作権侵害の具体的な要件

著作権侵害の成立には、大きく分けて①著作物に(著作物性)②似たものを(同一性・類似性)③元の著作物に依拠して作成すること(依拠性)という3つの要件が必要になります。

①著作物であること

当然ながら、前提としたイラストなどの作品が著作物であることが必要です。
ただし、ほとんどの物が著作物に該当するため、「著作物ではないかも」と考えて行動するのは相当なリスクがある行為になります。基本的には「他者の作った作品は著作物に当たるだろう」と考えて行動するとよいでしょう。

②同一性・類似性があること

同一性・類似性といった、元の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要とされます。
「本質的な特徴」(≒「創作的な部分」)が共通していることが必要であり、創作性がない部分が共通するのであれば、類似性はないということになります。

本質的な特徴かどうかは、裁判例でもかなり微妙な判断をしていて、どのような場合に本質的な特徴が共通しているのかを明確に区分けすることは困難です。
多くの裁判例では、①共通部分が「表現」か、あるいは「アイデア」といった表現とはいえないものか②共通部分に創作性があるか、ありふれた表現か、といった要素で判断されています。

通常は「オリジナリティ―があって面白い」と思った著作物を参考にするでしょうから、まねをして創作すると、多くは「同一性・類似性あり」と判断される可能性があることを理解しておきましょう。

③依拠性があること

依拠とは、元の著作物を自己の作品の中に用いることをいいます。逆に言えば、偶然一緒になったような場合には、依拠性が認められず著作権侵害にならないといえます。
依拠性も、裁判ではかなり微妙な判断になることが多いでしょう。また、単に「知らなかった」とだけ主張してもなかなか認められず、以下のような事情を総合して判断されることが多いといえます。

1. 後発の作品の制作者が、制作時に元の著作物を知っていたか(接する可能性があったか、有名な作品か、など)
2. どの程度似ているか(依拠していないとここまでは似ないだろう、など)
3. 後発の作品がどう作られたか(制作の時系列から見て独自に創作したといえるか、など)

なかなか独自に作成したと言い切るのは難しいでしょうから、似たようなものを作ってしまったら、依拠性も基本的に認められてしまうかもしれないと認識しておいたほうがよいでしょう。

著作権侵害に当たらない例外的な場合

基本的には、「他者の作品をまねたら、高い確率で著作権侵害とみなされる」と思って行動しましょう。ただし、著作権侵害があっても、例外的な事情があれば、許される場合があります。以下のような場合です。

許諾がある場合

著作権者が許していれば、著作権侵害に当たることなく利用することができます。
近年、ホームページの利用規約などに、転載のルールを記載することが増えています。これも許諾の一種と考えられますので、利用規約などをよく読んで、ルールにのっとって利用するとよいでしょう。

私的利用のために複製する場合

「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」(著作権法30条)複製することは許されます。

出典:総務省e-Gov「著作権法」


ただ、アクセス数が少ないからといってブログに上げると、理論上世界中から閲覧可能ですので、私的利用の範囲を超え、著作権侵害に当たることになります。
なお、個人で楽しむのであっても、違法ダウンロードは一定の場合に犯罪となり得るため、対象物が違法アップロードされたものでないかについては注意が必要です。

引用の要件を満たす場合

著作権法上の要件を満たすような引用を行った場合には、著作物を利用することができます。
ただし、適法な引用には、かなり難しい条件が課されていることを知っておきましょう。
明瞭区別性(引用部分と本文が分かれていること)、主従関係(本文が主)を中心に、利用目的やその方法・態様、利用される著作物の種類・性質、著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮する傾向にあります。さらに、出所の明示も必要です(著作権法48条1項1号)。

出典:総務省e-Gov「著作権法」

著作権侵害に当たる身近な例

著作権侵害に当たる範囲はかなり広く、例外として許される場面は少ないといえます。
日頃から気をつけておかないと、生活や仕事のさまざまなシーンで、著作権を侵害してしまう可能性があるでしょう。ここからは、陥りやすい著作権侵害の身近な例を5つ紹介します。

購入したCDを店舗のBGMとして使用する

購入した音源であっても、それを使う場面によっては著作権侵害になってしまいます。購入品がCDであっても、インターネット配信されたものであっても同じです。
店舗のBGMとして利用する場合には、福祉施設などの一部の例外を除き、日本音楽著作権協会(JASRAC)への許諾と使用料の支払いが必要です。

他人が描いたイラストの画像をSNSに投稿する

SNS(XやInstagramなど)に、他人が描いた画像をアップロードすること、さらには自分の投稿に添付して掲載することは、引用の要件などを満たさない限り、著作権侵害に当たり得ます。
アイコンのように、それが小さい画像であったとしても、著作権侵害には変わりません。
ある程度加工したとしても、類似性の要件を満たしやすく、やはり著作権侵害になりやすいといえるでしょう。
なお、イラストに限らず、有名人の写真も、(有名人のパブリシティ権などを侵害するほかに)撮影者の著作権を侵害することになります。

他人の文章を少しだけ変更した記事をブログにアップする

「てにをは」を変える、漢字・ひらがな・カタカナなどを変えるなどのささいな改変を加えただけでは、類似性(場合によっては同一性)があるとして、著作権侵害に当たります。

フリー画像サイトでダウンロードした画像の一部を切り取り、規約に反した利用の方法をする

フリー画像ならどのように利用してもよいと思われがちですが、これは大きな誤解です。
各サイトには利用規約があります。すなわち、フリー画像とは「何でもフリーな画像」ではなく、「規約の範囲内でフリーな画像」という意味なのです。
たとえば「商用不可」「加工不可」「アダルト不可」といった条件が付いていることがあります。
これらの条件に反して利用するのは、著作権者の許諾の範囲を超えるため、著作権侵害になり得ます。

「歌ってみた」動画を投稿する

YouTubeやニコニコ動画など主要な動画投稿プラットフォームは、基本的にJASRACと包括的な許諾契約があり、個人投稿であれば個別の許諾なく利用することができます。
ただし、あくまでJASRAC管理楽曲を含む動画や歌詞を利用する場合に関して包括許諾がされているので、たとえば曲を勝手にアレンジしたり、替え歌にしたりすると、その部分は著作権侵害に当たり得ます。

著作権侵害をした場合のペナルティー

著作権侵害をした場合、民事上または刑事上、以下のような重いペナルティーを負うことになります。

重い責任

民事上の責任とは、いわゆる当事者間で追及される責任のことです。主に、損害賠償義務を負うことになります。請求額が数億円を超える場合もあり、そのほか、差止請求、名誉回復措置の請求を受けることも考えられます。

刑事上の責任とは、有罪になって懲役刑や罰金刑を受ける責任のことです。悪質な著作権侵害については、著作権法で刑事罰も規定されています。著作権侵害は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方を科される可能性があることを知っておきましょう(著作権法119条1項)。加えて、著作者人格権の侵害にも、刑事罰が用意されています。

出典:総務省e-Gov「著作権法」


近年では、漫画海賊サイトの運営者のように執行猶予が付かない場合すらあり、逮捕者も出るなど、罰則が重くなっていっている印象です。

「知らなかった」では済まされないことが多い

民事責任は「著作権を知らなかった」と言い張ったとしても変わりません。民事上、故意だけでなく、過失もその対象になるからです。
刑事責任は、過失であれば罪に問われないといえます。ただ、実際には未必的なもの(侵害するかもしれないといった程度の認識)であっても故意が認められますし、実務的に「知らなかった」と言い張っても、周囲の状況などから「故意があった」と認定されてしまうことがほとんどです。

事実上過失責任を問われているような場面もありますので、「知らなかった」では済まされないことを前提に行動するとよいでしょう。

著作権侵害に当たらないようにするには

著作権は、知識がなければ侵害してしまう場面も多く、そのペナルティーは大きいといえます。
著作権侵害に当たらないようにするには、主に次のような対策が必要です。

① 著作物ではないものを利用する、保護期間が切れたものを利用する
アイデアそのものは著作物ではないので、アイデア段階のものを使用することはあるでしょう。
しかし、創作する際に、他人のアイデアだけを使う状況というのは多くないはずです。他人のアイデアが形になったもの(文章やイラストなど)を使うことのほうが圧倒的に多いため、著作物ではないものだけを利用するというのは、現実的でないといえます。

似たような概念として、保護期間が切れたものを使うことがあります。これは、著作物であっても著作権がないので、著作権侵害には当たらないように利用することができるでしょう。

② 適法な引用をする
引用の要件を満たすことが必要です。ただし、かなり厳格な要件が課されているため、企業が行う場合には、単独でなく複数でチェックするなど、十分な検証が必要でしょう。

③ 許諾を取る
最終的には、著作権者からの許諾を得て利用するほかありません。
近年では、著作権者側が侵害に厳しく対応するケースも増えていますし、発覚して企業の社会的信用が落ちることもあります。迷ったら著作権者に問い合わせるのが、選択としてベストでしょう。

著作権を学ぼう

著作権を侵害しないようにするためには、著作権について深く理解し、企業の場合は、従業員に対しても、著作権の基本的なルールを啓発することが重要になります。
広報担当者など著作物を扱う機会の多い方や法務担当者として著作権についての意見を求められそうな方は、ビジネス著作権検定で著作権に関する知識を身につけ、リスクを未然に減らしておきたいところです。

なお、ビジネス著作権検定では以下のような問題が出されます。

Q
著作権の侵害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
著作権の侵害については罰則が設けられているが、著作者人格権の侵害については罰則が設けられていない。
著作者の名誉を害する方法で著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなされる場合がある。
国内で販売する目的で海賊版を輸入する行為は、著作権を侵害する行為とみなされる場合がある。
著作権の侵害物品について、侵害の事実を知りながら、販売のために所持する行為は、著作権を侵害する行為とみなされる。
・このように、クイズ形式で著作権に関する知識を身につけたい方は、ビジネス著作権検定サンプル問題に挑戦してみてください。
ビジネス著作権検定
サンプル問題
(先ほどのクイズは「ア」が正解です)

執筆者プロフィール
神尾尊礼
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。現在、東京スタートアップ法律事務所所属。一般民事事件、刑事事件から家事事件、企業法務まで幅広く担当。企業法務は特に医療分野と教育分野に力を入れている。
電子パンフレット
検定の概要をまとめた
電子パンフレットを
ご用意しています。
サンプル問題
ビジネス著作権検定の
サンプル問題を
掲載しています。

この試験もおすすめです

AI検定
「AIと著作権」は今最も注目を集めているトピックの一つ。AIと著作権、それぞれの基礎知識の土台を持っておくことで、移り変わる状況の中でも考え、判断するための力が身につきます。
教育著作権検定
著作権法は、学校などの教育機関において、様々な例外措置を設けています。
教育著作権検定は、教育活動において自信を持って著作物を活用するために必要な著作権知識を身に着け、スキル証明できる試験です。