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久保田裕の著作権コラム

委員長プロフィール 久保田 裕

  • 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事
  • 山口大学特命教授
  • 公益社団法人著作権情報センター 理事
  • 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 理事
  • 特定非営利活動法人 ブロードバンドスクール協会 情報モラル担当理事

「現代のビジネスシーンにおいては、著作権の知識は不可欠である」という命題に異論を唱える方はいないでしょうか。ただし、これまではその意味を「うっかり他人の著作権を侵害しないために著作権の知識を身につけるべき」との、どちらかというと「防御」の観点で説明されてきた印象を受けます。
しかし、著作権は守りのツールではありません。より積極的に攻めのツールとして活用すべきものなのです。魅力ある著作権物(コンテンツ)は時を超え、国境を越えて愛され続けます。そのコンテンツから利益を生み出し、剽窃から守る源こそ著作権なのです。著作権を正しく理解し、適切な契約を関係者と結び、デジタルコンテンツならば適切なDRM(著作権管理技術)を選択して流通させることが重要です。
一方で、著作権は著作物を生み出さない立場であっても重要な知識です。例えば、各種イベントのために外部のデザイナーが創作した「キャラクター」を利用しようとした場合に、利用方法を踏まえた契約を締結することが担当者には求めされていますし、契約の範囲を超えた利用をしていないかを判断できなければなりません。また、昨今盛んになっている「地域のブランド化」を支える「地域コンテンツ」も、その土台は著作権が中心となります。

■ サーティファイ委員長コラム Vol.43

ビジネス著作権検定は2003年にスタートして、はや20年。累計の受検者数は2022年度までで83,594名だ。この間、著作権に対する社会の関心は高まり続け、会場受検に加えてオンライン検定も行われるようになった。ビジネスマンや学生たちが受検して著作権の知識を身につけ、社会で活躍していることを考えると、委員長として心からうれしく思う。
私は委員長を拝命する以前から、30有余年にわたり、著作権教育に携わってきた。今回は、私の活動を通じて感じた著作権学習の意義と重要性について述べたい。

私は現在、高等教育機関では山口大学、東京工芸大学、国士舘大学で、それぞれ学部の特徴に合わせ「著作権法」「情報社会と知財」等について講義をしている。また、茨城県の中高一貫校である茗溪学園では特命校長補佐、神奈川県では北鎌倉女子学園の知的財産教育アドバイザーとして情報教育に協力している。学生の著作権に対する関心は高く、授業の終了後には多くの学生が質問に来てくれる。

さらに、法務省の委託を受けて全国の少年院で「情報リテラシーと著作権」の授業を行っている。授業を受ける彼らは、もちろん若者だ。でも、学校教育を受けてこなかった子も多く、「著作権」についての知識は少ない。ところが、いわゆる「推し」活動がやり方によっては著作権やパブリシティ等を侵害し、その結果推しにも迷惑を掛けることになる、と説明すると、理解してくれた。さらに、院内ではSNSから遮断されており、年間100冊近く読書し、じっくり創作行為に取り組んでいる彼らは「著作物」への思いも強い。そして著作権教育を通じて出院後の仕事にも思いを馳せることになるのだ。

 学校での著作権教育は2000年頃から徐々に広がり、昨今は大学入試共通テストの問題にもなるほどだ。だから若者には知識を持っている人が多い。それはSNSなどの「炎上」を通じて著作権侵害の事案を見聞きする機会も多いからかも知れないし、スマートフォンで自ら情報発信をする若者が増えたからかもしれない。正確に説明できなくても、他人の著作物を勝手に利用してはいけない、といった基礎的な理解は、若者は持っているように思う。

ところが一方で、本検定があることを知らない人がいる。そもそも、著作権という言葉は聞いたことはあるが何のことか分からないという人もまだまだ中高年に多いようだ。著作権の知識に関しては、社会が二極化しているように感じるのである。
 おそらく、ビジネス著作権検定を受ける人たちは、ビジネスに役立てようとか、就職活動で有利になりそう、といった動機があるのだと思う。同様に、「推し活」や「ゲーム、アニメなど」への愛も、著作権を理解する上では大事な動機だ。
では、著作権について理解が進まない大人たちは、どんな動機があれば勉強してくれるのだろう。

 かつて文化庁で著作権課長を務め、本検定の土台を作った故・岡本薫氏は、「いずれ所有権と同じように、著作権は、特別に勉強しなくても市民の共通認識となる社会が来る」と言っていた。所有権は、法律のことを知らなくても、他人の持ち物を盗んだり、壊したり、勝手に使用できないことを誰もが知っている。同様に、著作権も、法律について詳しく知らなくても、他人の著作物を勝手に利用してはいけない、という理解が当たり前の社会になる、という意味だ。
私は、著作権教育を通じて、著作権を学ぶ事は著作権にとどまらず、「著作物」という情報の価値や意味を知ることが情報社会を理解する事に直結すると考えてきた。著作権教育は情報教育にも繋がるのだ。それは著作物という情報の本質を理解すれば、情報社会が変容しても著作権制度とともに理解が進むからだ。
とりわけ「情報社会の安全安心な社会づくり」の観点からは民主主義を担保するメデイアが生み出す著作物の扱いこそ最重要と考える。フェイクニュースはまさに著作権法の問題だ。
また、今年6月、文化庁が「AIと著作権について」現状を報告したが、AIは、財産権もさることながら究極的には著作者や創作・創造者の人格権の問題に収斂されていくのではないかと推察している。

このように、著作権への深い理解は、進化する情報社会に参加するためにも必須なのだ。そのためにも、あらゆる組織、機関で著作権教育は必須だ。
 こうした問題意識の中、私が務める一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)にWebスクール運営会社(株)Live出版が入会し、私がWebデザイナーに向けた著作権の講義をすることになった。聞けば受講者は、20歳代後半から40歳代だと言う。実務上で著作権の問題に直面することが多い一方で、彼らの知識はあまり高くないそうだ。私は、講義後の理解度チェックで本検定を薦めてみようと考えている。
 今後も、社会全体で知識の底上げのために、あらゆるグループ単位、あらゆる階層などに向けて、著作権や情報モラルの知識を普及したい。「推し活」の話が皆に通じるとは思わないが、著作権を学びたいという動機を見つけて、普及に努めたい。
 そして、本検定の合格者は、情報の価値や意味を理解する先端の知識を持っていると言っていい。皆さんには、是非、会社や学校で、周りの人に著作権の知識を臆せず広めてほしい。

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